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はじめに
脳血管障害,脳性麻痺,脊髄損傷などの中枢神経疾患にみられるspasticityあるいはrigidityの存在は,リハビリテーションを遂行する上で著しい妨げとなり,これらを正しく抑制する事は望ましい機能を獲得する上で重要な要素である.
spasticityとrigidityに対するリハビリテーションのアプローチを述べる前に,その日本語訳と定義について明確にしておく必要がある.
spasticityは痙性,痙直,痙縮などの訳があり,rigidityは強剛・固縮と訳されている.本文では便宜上spasticityを痙縮,rigidityを固縮と訳すことにする.
痙縮はDorlandの辞書によれば“a state of hypertonicity or increase over the tone of muscle,muscle with heightened deep tendon reflexes”であり,Nathan44)の定義では,伸張反射が低閾値で,腱反射が亢進し,クローヌスが起り易い状態をいい,一方固縮は,伸張反射は高閾値で,腱反射は低下し歯車現象(cog-wheel phenomenon)や鉛管現象(lead pipe phenomenon)がみられる状態を示している.
臨床的には痙縮は錐体路,固縮は錐体外路の障害によって起るとするものもあるが,この定義は必ずしも神経生理学的な立場からはあてはまるものではない.
Kottke33)は痙縮は相動性伸張反射(phasic stretch reflex)の亢進,すなわち動的ガンマ運動ニューロン(dynamic γ motorneuron:γ1)の活動性が高まっている状態を,固縮は持続性伸張反射(tonic stretch reflex)の亢進,すなわち静的ガンマ運動ニューロン(static γ motoneuron:γ2)の活動性が高まっている状態を示していると述べている(図1).
以上はいずれも筋紡錘(muscle spindle)を介する反射であり,臨床場面では痙縮・固縮が単独で存在するよりは合併して存在(rigidospasticity)することが多く,リハビリテーションのアプローチとしては,痙縮・固縮を別々にして扱うものはないため,以下痙縮に対するアプローチとして代表させる.
また痙縮は細かく分ければα痙縮(α spasticity)とγ痙縮(γ spasticity)の2つがあるが,臨床的にはほとんどがγ痙縮であり,一括して痙縮とする.
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