- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
障がい者差別解消法の誕生と教育界
2016年4月に,相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指し,障がい者差別解消法(正式な表記は「障害者差別解消法」であるが,本書では障害者=害を有したり発したりする存在ではないという昨今の風潮を支持し,本稿でも障がいと表記)が施行されている.本法は不当な差別的取り扱いを禁止し,障がいをもつ人への合理的配慮の提供を求めている.対象となる障がい者は,障がい者基本法第2条で定義されている.障がい者手帳の有無を問わず,障がいや多種多様な社会的なバリアにより日常生活・社会生活に相当な制限を受けているすべての人を対象にしている法律である.
障がい者差別解消法での一大関心事は「合理的な配慮とは何か」ということである.法律で合理的配慮をすべしと書かれていても,われわれが多様な生活環境で何をすればよいのかはすぐにはわからないものである.わからなくて当然でもある.これは,個別の環境で合理的配慮として行ったことをデータベースなどに蓄積し,それらを分析しながら議論を行い,環境別の合理的配慮が収束する方向になるはずである.では,この合理的配慮というのはどのような事に起因しているのか.実は,アメリカでは合理的配慮(reasonable accommodationという)が,福祉的な対応に関連する判例の複数に残っている.一定の理に適う措置や調整を行うように,という指示を意味する法律用語である.1982年にアメリカのリハビリテーション法の施行規則に合理的配慮が盛り込まれた.さらにその後1990年に「障がいを持つアメリカ人法(いわゆるADA法:Americans with Disabilities Act of 1990)」で明確に定義された.合理的配慮の先輩がアメリカである.
Copyright © 2020, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.