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周術期とは
周術期管理とは,『手術療法を安全,確実に施行するために行われる患者管理.術前は,患者の疾患の管理に加えて全身状態(年齢,栄養状態,水分電解質バランスの異常など)および各重要臓器機能(脳循環機能,呼吸機能,肝機能,内分泌機能,腎機能など)の評価を行い,手術療法に必要な処置を行う.術後は,手術侵襲からの速やかな回復,術後合併症の予防に努め,万が一合併症が発生したときには適切な対策を講じる(術中管理については麻酔中モニター).① バイタルサイン(意識状態,体温,血圧,脈拍,呼吸数,尿量のチェックなど),② 手術創の管理(出血の有無,程度,ドレーンからの廃液状況など),③ 呼吸・循環・代謝に関した管理があり,異常が見つかれば原因を追究しこれを是正する.』(医学大辞典,第2版【電子版】,医学書院)とあり,術前,術中,術後の全身管理を表している.一方,術中体位などの原因による末梢神経障害はperioperative peripheral nerve injury(周術期末梢神経障害)と称され,術後48時間以内に生じた,手術侵襲とは直接関係のない末梢神経障害と定義されている1).同じ『周(peri)』を冠した古典的な医学用語には周産期死亡があるが,これは妊娠22週以降の死産と生後7日未満の早期新生児死亡を合わせたものをいい,衛生水準の国際比較の指標として厳格な定義が国際的に用いられている.ところが,同様の時期に生じる病態の周産期脳障害は,『妊娠28週以降から出生1週以内に原因があり,精神運動発達に障害を認めるもの』(医学大辞典,第2版【電子版】,医学書院)とある.つまり同じ『周』を冠した用語でも専門領域,関心領域の違いにより微妙に意味が異なるということである.
本号の特集である,周術期リハビリテーション診療については,手術前リハビリテーション診療と手術後リハビリテーション診療を併せた用語と思われるが,術前の期間,術後の期間について明確な定義はなく,治療成績の施設間比較や多施設の診療統計調査などの際には注意が必要である.また,術前リハビリテーション診療について,prehabilitationという新しい用語も散見される2)が,国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health;ICF) Frameworkにおけるリハビリテーションの概念には障害予防が包含されているのであるから,すでに用いられているpreoperative rehabilitationで十分に共通認識は得られており,あえて新しい用語を使う必要はないというのが筆者の意見である.
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