Japanese
English
特集 周術期のリハビリテーション診療—何を考え何を診て何をするのか
開心術
Open-heart surgery
櫻田 弘治
1
,
高橋 哲也
2
Koji Sakurada
1
,
Tetsuya Takahashi
2
1心臓血管研究所付属病院リハビリテーション室
2順天堂大学保健医療学部理学療法学科
1The Cardiovascular Institute, The Cardiovascular Institute
2Faculty of Health Science, Department of Physical Therapy, Juntundo University
キーワード:
開心術
,
高齢者
,
離床基準
Keyword:
開心術
,
高齢者
,
離床基準
pp.439-447
発行日 2020年5月10日
Published Date 2020/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201944
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
現在,日本は世界に類をみない高齢化社会に突入している.他の医療分野と同様に心臓血管外科分野においても,医療の進歩による低侵襲化によって,高齢であることのリスクが低くなり手術を受けられるようになってきた.事実,当院の待機的手術患者の平均年齢は70歳で最高齢は92歳であった.その反面,手術を乗り越えることはできたが術後経過が思わしくなく,歩行再獲得できずに自宅退院が困難となる患者がみられるようになった.高齢者の開心術患者の特徴として,術前からの運動能の低下がある.これは,加齢による最大心拍数低下や洞結節の反応性の低下,左室スティフネス増大によって収縮能は保たれているが左室肥厚が増大した,いわゆる拡張能が障害されていることが原因のひとつであり1),さらに,拡張障害は左房径の拡大をもたらし,運動や手術侵襲,発熱などのストレスによって心房細動へ移行しやすい.心房細動による心拍数の上昇や左房収縮による左室への血液充満の消失となり心拍出量の減少をもたらし,術前術後の心不全を引き起こしやすくしている.したがって,手術によって生じた異化亢進や安静臥床による廃用症候群による筋力・運動能の低下に対する術後のリハビリテーションに加え,術前のリハビリテーションも重要な役割を担う.本稿では,開心術患者の周術期(術前・術後)におけるリハビリテーション診療で何を考えて何を診て何をするのかを解説する.
Copyright © 2020, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.