Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
斎藤茂吉の『あらたま』—歌で綴られた精神障害者
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.604
発行日 2019年6月10日
Published Date 2019/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201674
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大正10年に斎藤茂吉の第2歌集として発表された『あらたま』(『斎藤茂吉全集第1巻』,岩波書店)は,大正2年から6年にかけて詠まれた作品で構成されているが,当時は茂吉が,松沢病院の前身の巣鴨病院に勤務した時期でもあるため,入院患者の様子を詠った歌が数多く収められている.
たとえば,「かかる夜半に独語いふこゑきこゆ寝るに堪へざらむ狂者ひとりふたり」や,「夜の床に笑ひころげてゐる女わがとほれどもかかはりもなし」は,夜間も独語や空笑が止まない入院患者を詠った歌であるし,「うつうつと暑さいきるる病室の壁にむかひて男もだせり」は,病室の壁を向いたまま黙して語らない患者の姿を描いた歌である.
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