Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
斎藤茂吉の『結核症』―病と創造性
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.728
発行日 2007年7月10日
Published Date 2007/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101005
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大正15年に発表された斎藤茂吉の『結核症』(『斎藤茂吉全集』岩波書店)では,結核と文学の関係に関する病跡学的な議論が展開されている.
この短いエッセイの中で茂吉は,結核が創造性に及ぼす影響について,「総じて結核性の病に罹ると神経が雋鋭になって来て,健康な人の目に見えないところも見えて来る」,「末期になると,病に平気になり,呑気になり,将来に向っていろいろの計画などを立てるやうになるが,依然として鋭い神経を持っている」と,指摘する.茂吉は,結核患者には「健康の人が平気でやっていることに強い『厭味』を感じたり,細かい『あら』が見えたりする」と,その敏感・繊細性を主張するのである.
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