Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
斎藤茂吉の『赤光』—歌で綴られた精神科病院
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.162
発行日 2016年2月10日
Published Date 2016/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200516
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歌人の斎藤茂吉は,明治43年に東大医学部を卒業した精神科医でもあって,精神科医としての体験に基づく歌を数多く作っているため,そこには世界的にも珍しい韻文で表現された精神科医の姿や精神科病院の様子を見ることができる.
たとえば,大正2年に発表された第一歌集の『赤光』(岩波書店)には,「気ちがひの面(おもて)まもりてたまさかは田螺(たにし)も食べてよるに寝(い)ねたる」という歌をはじめ,「狂院に寝てをれば夜は温(ぬ)るし我がまぢかくに蟾蜍(ひき)は啼きたり」,「寒ぞらに星ゐたりけりうらがなしわが狂院をここに立ち見つ」など,夜の精神科病院を舞台にした歌が数多く収められている.
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