- 有料閲覧
- 文献概要
見えない障害というフレーズを耳にすることが最近多くなった.筆者の勤務している横浜市障害者更生相談所でも昨年からヘルプマークの配布を開始している.ヘルプマークとは義足や人工関節を使用している方,内部障害や難病の方,または妊娠初期の方など,外見からわからなくても援助や配慮を必要としている方々が,周りに配慮を必要としていることを知らせることで,援助を得やすくなるよう東京都が作成したマークであるが,これはまさに見えない障害の方に対してのもので,社会的な動きも広がっている証拠でもある.
筆者の勤務する職場には聴覚障害の職員がいる.補聴器と読唇で会話を理解するとのことで,会議などでは原則,大きめの声でかつ口元の動きがきちんとわかるように気を付けている.それで仕事上はそれほど問題となるようなことはないのだが,実際の聞こえや理解の仕方をあとで聞いて驚いた.読唇は口の形が示す母音を主に頼りにして言葉の判別を行っていること,そして補聴器は音を大きくはしてくれるがクリアな音にはならずゆがんだ音として聞こえてくるので,会話などは完全ではない音声の手がかりと,現時点まで話の流れや視覚的な手がかりをもとに内容を分析し理解しているというのである.そのため,話の内容の一部が理解できないこともあるのだが,普段接している人であってもそういう状況にあることはなかなか気づきにくい.本当は自分の障害のことを説明しその状況をわかってもらうことが最もよいのであるが,周りの人すべてにそのようなことを伝えるのは困難でもどかしい思いをしているというのである.しかし聞き取れなかったことをあとで伝えたり,文字にしたりするなど周囲が配慮し,情報をきちんと伝えられれば,理解力や判断力などの職務を遂行する能力は健常の職員と同様であるので,もっている能力をきちんと発揮できるのである.
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.