とびら
見えるものと見えないもの
富樫 誠二
1
1大阪河﨑リハビリテーション大学
pp.1
発行日 2010年1月15日
Published Date 2010/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101556
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病棟の一角に,ポトスの鉢植えを置いた日当たりのよい静かな場所があります.そこでは,朝早くから患者さんがいつも何人か集まってはワイワイとおしゃべりをしています.先に手術をした患者さんが,つい最近,手術をした患者さんに声をかけています.「おはようございます」,「どうですか,痛みはありませんか?」,「いやぁ,なかなか大変ですね」,「そうでしょう.私も2~3日は痛くて動くのが大変でした.でも1週間経って,抜糸をするころには動くのは楽になりますよ」,「うん,私もそうじゃったね.まだ手のしびれはあるけど痛みは手術をしたら日に日によくなってきたよ」,「私は,もっと早く手術をすればよかったね.農業が忙しくて,なかなか決心がつかないでね.その分,もどりが悪いんかもしれんね」,「いまは,MRIで,脊髄が圧迫されているかどうか,すぐわかるからね.神経が圧迫しているのが見えるのにほっとくとどんどん悪くなるね」,「そりぁ,虫歯と一緒だね」,「早く処置してもらったほうがいいね」,「昔は見えないからほっといて寝たっきりになった人もたくさんいただろう」ありふれた日常の,病棟の面談室での患者さん同士の会話です.
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