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今のところ免疫のバランスとしてはTh1/Th2/ Th17/Tregの4方向バランス説が優勢にある.優位なリンパ球の性格により疾患は分類されるが,自己免疫・腫瘍免疫などはTh1に,アレルギー疾患はTh2に,そして乾癬はTh17疾患として捉えられる.またバランスがどちらかに傾きすぎないように自ら修正し,また治療により改善を図る集団としてTreg(抑制性T細胞)がある.これらは一見,人々の集まりに似ている.懐メロのコンサートでは年配の方々がしんみりと応援するが,若者のコンサートでは熱狂的なファンが声援する.逆にその過剰な盛り上がりを抑制しようと警備員が目を光らせる.どの種の性格のリンパ球が集まるかは疾患により異なり,またその病期によっても変遷する.同じヒトでもアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD,Th2)で悩んでいた頃もあればニキビ(Th1)が主訴になることもある.当然とのことかもしれないが,アンバランスは傾きはじめ(発症初期)の方が修正しやすく,平衡状態(治癒)に戻りやすい.
副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤はこれらの4方向の勢いを総じて押さえ込む働きがある.ADのTh2や乾癬のTh17細胞のみの活動性を抑制することはできない.われわれはADを含めたTh2疾患をTh1誘導因子であるBCGやニキビ菌などを負荷することにより改善しようと試みている.アレルギー疾患に対する免疫療法はTregを誘導して4方向のアンバランスを修正しようとする.悪性黒色腫を含めた悪性腫瘍も免疫の強化(Th1の増強)により少なくともコントロールできる事実がわかりつつある.実際にはもっと複雑に免疫のネットワークは張り巡らされているのであろうが.診察室で患者さんに,体を右(Th2)に左(Th1)に傾けながら病因や治療の説明をしている.2方向バランスの時代は説明しやすかったが,現在は4方向バランスの解釈のため,体をどちらに傾けようか迷いつつ診察している.
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