Editorial
見えるものと 見えないもの
松村 真司
1
1松村医院
pp.557
発行日 2010年8月15日
Published Date 2010/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101966
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子どものころ,といっても,もう小学校高学年になっていただろうか.ある日,部屋の硝子越しに差しこむ光をぼんやり眺めていた時に,そのなかを漂うキラキラ光る微粒子に気がついた.この,ゆっくりたゆたう微粒子こそが物質としての光なのか,そしてこの微粒子が総体となって昼の明るさを規定しているものなのか,とその時考えたことを覚えている.
もちろん,その後しばらくたって,私が発見したものは光でもなんでもなく,舞い上がった部屋の埃である,という,ロマンチシズムに欠ける説明を私は受け入れたのであるが,その瞬間は,その時までは光を光そのものとして見ていた私の意識の焦点が,光や明るさを構成している要因は何か,という段階へと移行する過程だったのだろう.
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