Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
「訪問リハビリテーション」は,医師の指示の下に対象者の居宅に理学療法士,作業療法士,言語聴覚士(以下,療法士)が訪問しその専門性を生かし,自立支援を行う医療サービスである.制度上は医療保険および介護保険ともに医療機関(病院,診療所,老人保健施設)からの提供を「訪問リハビリテーション」と位置付けられているが,訪問看護ステーションからの療法士の訪問もサービス提供量が多い.こちらは訪問看護の一環として位置付けられているものの,内容的には同等であると考えられる.このように制度的な違いはあるものの,本稿では,この双方を「訪問リハビリテーション」して論ずるものとする.
さて,「訪問リハビリテーション」の領域と対象者を正確に把握する全国調査資料は現状では見当たらない.そのような背景を踏まえつつ,日本訪問リハビリテーション協会の会員施設に対する実態調査からその対象疾患別(様態を含む)の項目・割合をみていくと図11)のようになる.
この調査では,1位が脳血管疾患,次に骨関節疾患,以下,神経変性疾患,内部障害(循環器系疾患,呼吸器系疾患など),認知症などの順となっている.このようにみていくと,生活機能に障がいがもらされる疾患が中心であることはいうまでもなく,多岐にわたっているといえる.また,訪問リハビリテーション事業所の8〜9割は介護保険の対象であり,高齢障がい者の対象が非常に多い.もちろん,発達障害や精神疾患,事故などによる若年障がい者も対象であるが,40歳未満の対象者は4.8%と少ないのが現状である1).
このように,本稿では対象の多数を占め,かつ比較的実態のつかみやすい介護保険対象領域の現状と課題に絞り,以下の項目について述べる.まず,訪問リハビリテーションの提供量の推移について,次に介護保険制度下において質を担保するための課題,地域包括ケアにおける訪問リハビリテーションの課題,訪問療法士の教育および専門分化に関する課題の順に論ずる.
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.