Japanese
English
実践講座 脳損傷者の自動車運転・2
脳損傷者の自動車運転をめぐる法的問題点
Legal aspects for vehicle driving by the patients with brain damage.
一杉 正仁
1
Masahito Hitosugi
1
1獨協医科大学法医学講座
1Department of Legal Medicine, Dokkyo Medical University School of Medicine
キーワード:
自動車運転
,
脳障害
,
道路交通法
,
疾病
,
安全
Keyword:
自動車運転
,
脳障害
,
道路交通法
,
疾病
,
安全
pp.551-556
発行日 2010年6月10日
Published Date 2010/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101789
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バリアフリーと自動車運転
近年わが国では,障害者が障害のない人と同等に生活して活動するノーマライゼーションの理念が社会に浸透してきた.すなわち,高齢者や身体障害者などが自立した日常生活や社会生活を営むことができるような環境が整備されてきた.これらの人に対して,公共交通機関を利用した移動の利便性や安全性の向上を促進するため,2000年11月に「高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法)が施行された1).
自動車の運転に焦点を当てると,1960年に制定された道路交通法では,精神障害者,知的障害者,てんかん患者等の特定の疾患患者は,絶対的欠格事由とされ(旧道路交通法第88条),自動車の運転免許を取得することができず,交通社会への参加が制限されていた.しかし,バリアフリー社会が到来し,障害者施策推進本部は「障害者に係る欠格条項の見直しについて」(1999年8月)という報告書を提出した.そして,交通安全と障害者の社会参加の両立を維持したうえで,障害者に係る免許の欠格事由が見直されることとなった.政府は,道路交通法の一部を改正し(2002年6月施行,改正道路交通法),障害者に係る免許取得の欠格事由をすべて廃止した.そして,自動車運転に支障があるかによって,免許取得の可否を個別に判断することとなった.根本的な概念として,安全運転に必要な身体的能力や知的能力は運転免許試験(適正,技能,学科試験)で確認することが示され,一定の病気に罹患していても安全な運転に支障がないことや,支障がない程度まで回復する場合がある,ということが再確認された.
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