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はじめに
脳卒中とは,「卒然(突然)として邪風に中(あた)る」ことを意味しており,英語のSTROKEの意味は,「一発で打ちのめされた状態」である.脳卒中には脳梗塞,脳内出血,くも膜下出血が含まれており,いずれも「症状を伴う」病態である.急性期脳梗塞例に対しては,発症から4.5時間以内であれば,遺伝子組み換え組織プラスミノゲンアクチベーター(recombinant tissue plasminogen activator;rt-PA)静注療法に加えて,主幹脳動脈の近位部閉塞例には,機械的な血栓回収療法の追加が患者転帰を改善することが示されている1-5).脳卒中後の良好な機能回復には,こうした急性期血行再建療法の重要性と並んで,急性期からの脳卒中リハビリテーションが不可欠である.一方,急性期脳卒中例では,注意すべき脳循環病態が存在し,急性期脳卒中リハビリテーションでの離床リスクの1つとなっている.
脳卒中患者に対する早期からのリハビリテーションの有用性に関して,1990年代,Indredavikら6)によって,一般病床と比較してstroke unit(SU)での早期リハビリテーションと早期離床は,著明に死亡率を低下させ,転帰を改善したという報告がなされた.脳卒中自体に関連しない早期死亡には,感染や肺血栓塞栓症といった「動かない」ことによる合併症が少なからずみられることや,動物実験からは,脳卒中発症後早期からのリハビリテーションは脳の可塑性を高めることが報告された7,8).一方,脳卒中発症早期からの頭部挙上を伴う負荷は,脳虚血巣の拡大を助長する危険性があるとの指摘もなされた9,10).こうしたことから,安全で効果的な脳卒中急性期リハビリテーションとは発症後,何時から,どのような動作強度で始めるのか,明らかにされていなかった.
2015年,こうした疑問に対する重要なエビデンスとしてA Very Early Rehabilitation Trial(AVERT)11)の結果が発表された.本稿では,急性期脳卒中リハビリテーションにおける「脳循環と離床リスク」について,臨床病型別脳梗塞の特徴,脳梗塞急性期の脳循環代謝病態,急性期脳卒中例での離床リスクに関係するエビデンスを踏まえて概説する.
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