Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
夏目漱石の『坊っちゃん』—同調圧力からの自由
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.838
発行日 2016年9月10日
Published Date 2016/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200721
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明治39年に夏目漱石が発表した『坊っちゃん』(岩波書店)は,発表から110年を経た今日なお多くの読者に親しまれている作品であるが,『坊っちゃん』が今でも根強い人気を保ちつづけている理由の一つは,世間の常識に合せようとか,自分を曲げてまで職場に適応しようとしない坊っちゃんの非同調的な生き方にあるように,思われる.
たとえば,松山を思わせる四国の中学校に赴任した坊っちゃんは,校長から「生徒の模範になれの,一校の師表と仰がれなくては行かんの,学問以外に個人の徳化を及ぼさなくては教育者になれない」などと注文された時には,「この様子じゃ滅多に口もきけない,散歩もできない」と反発し,「到底あなたのおっしゃる通りにゃ,できません」と言って,辞令を突き返そうとしている.
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