Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「山口組三代目」—被虐待および愛着上の問題を抱える子供・青年に用意されるべき出会いの課題が見えてくる
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.839
発行日 2016年9月10日
Published Date 2016/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200722
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「山口組三代目」(監督/山下耕作・1973)は,冒頭字幕にあるように,全国424団体,推定準構成員11万人を擁した,日本ヤクザ史上,最強最大の組織をつくりあげた田岡一雄の自伝に基づく実録物である.田岡を演じたのは高倉健.注目すべきは,田岡が山口組に出会うまでの幼少期から青年期にかけての描写である.
高倉はこのころ,任侠映画に意欲をなくしていたが,本作については好意的に評価している.おそらく,田岡の生い立ちの描写に心打たれるものがあったからだろう.高倉が田岡に「親分と同じように,頭がよくても貧しいために学校に行けない子はたくさんいる.そんな子のために山口組で育英資金を出してはどうですか」と話しかけると,「それはええ考えやな.さっそく検討してみよう」と答えたという逸話は,その証左である.
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