文豪と死
夏目漱石
長谷川 泉
1
1医学書院
pp.870
発行日 1976年11月1日
Published Date 1976/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201216
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夏目漱石(1867〜1916)は森鷗外と並び称される近代文学の2大作家である.鷗外が長男として森家を興すべく大切にされたのに対し,漱石は8番目の子,5男でやっかい者にされた.生まれて間もなく古道具屋の女中の家に里子に出され,夜店で道ばたの売り物のざるの中に,がらくたといっしょに入れてほうり出されているのを,通りがかりの姉が見かねて実家に連れもどされたという.
鷗外は陸軍,官界で終生権威のなかにあったが,漱石は東大と一高の英語の教師をやめてからは,朝日新聞に入社して小説を書いた.在野の人として自由の立場にあった.文部省が推薦制の文学博士をやろうとした時,鷗外は素直に受けたが,漱石は博士号を蹴とばして,博士号記が両者の間を行ったり来たりして宙に浮いた.結局もらわなかった.
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