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はじめに
肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension;PAH)は肺動脈壁の腫瘍性増殖,リモデリングにより肺動脈の狭小化を来す疾患群であり,肺血管抵抗が上昇することにより最終的には右心不全に至る1).そのなかで,肺静脈閉塞症(pulmonary veno-occlusive disease;PVOD)は,病変の首座が肺静脈にある疾患で臨床的にPAHの約10%といわれる2).拡散能の低下が著明で,これに伴い低酸素血症が高度となり,そのため運動耐容能や日常生活動作(activities of daily living;ADL)などの活動性低下を来す.予後はきわめて不良で,多くの場合2年以内に死亡する可能性が高いと報告されている3).
PAHの完治は難しく,できる限り肺動脈圧を低い状態に保ちつつ予後を延長することを目標に,内科的治療や手術療法が選択される.しかし,診断・治療までに時間を要することも多く,低酸素血症による活動性の低下に伴うdeconditioningの進行により生活の質(quality of life;QOL)が低下することも多いため,PAHに対するリハビリテーションの重要性や必要性が認識されている4).
近年,循環動態の安定しているPAH患者に対する運動療法や呼吸トレーニングは,運動耐容能やADLを向上させ,QOLを改善すると報告されている5).安藤ら6)はPAH患者に対する呼吸筋トレーニングが呼吸筋力を増加させ,息切れなどの自覚症状を改善したと報告しているが,PVOD患者に対する運動療法や呼吸筋トレーニングの実行可能性や有効性についてはよくわかっていない.
今回,重度の活動性低下を来したPVOD患者に対して吸気筋トレーニングを併用した理学療法を入院期から在宅期まで実施し,客観的評価に基づき経過を検討したので報告する.
なお,本報告は鹿児島大学大学院医歯学総合研究科倫理審査委員会の承認を得て行った.
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