Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「人生案内」—人格形成の教育とは明日への明るい見とおしを創ること
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.543
発行日 2016年6月10日
Published Date 2016/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200635
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筆者を含め60代半ば以上の往年の教育実践者は少なからずマカレンコの影響を受けている.最近も,元校長の講演でマカレンコの「規律と自由は仲良し」という言葉を聞いたばかりだ.1888年にウクライナで生まれたマカレンコは,1917年のロシア革命の後,1920年から浮浪児や法律違反をする子供たちの教育施設で,新しい型の教育を展開した.マカレンコは集団主義教育を唱導し,「要求と尊敬」,「明日の喜び」,「見とおし路線」など,普遍的な教育の指針たりうるキーワードを残した.
1931年に製作されたソビエト・トーキー第1回作品「人生案内」(監督/ニコライ・エック)は,マカレンコの教育実践をモチーフにしたものである.当時のソ連は,第一次世界大戦に続く十月革命,反革命軍や干渉軍との戦い,飢饉と悪疫などが重なり,街は浮浪児で溢れていた.浮浪児は,日々の糧を得るために,徒党を組んで駅頭などで盗みを繰り返し,時には相手を死に至らしめることもあった.マカレンコ教育の真骨頂は,このような子供たちを,子供集団の力によって真っ当な人間に育てるところにあった.
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