誌上セミナー 医学書院看護学セミナー
人格の形成発展とナースの教養
佐藤 幸治
1
1京都大学文学部
pp.39-41
発行日 1966年2月1日
Published Date 1966/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912627
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成熟した人格の特徴
人格形成とか人づくりとかは,いろいろ論じられているが,こういう問題に関する学問的な検討は必ずしも広く行なわれているわけではない。
人格心理学で世界の第一人者であるハーバード大学のオールポート教授は,最近の著作で「成熟した人格」(マチュアーパーソナリティー)ということを述べているが,今から25年ほど前の彼の最初の著作では3つほど成熟した人格というものの特徴をあげている。第1の特徴は,小さい自分というものに限られないで自分の周囲の人びと,社会,さらに世界といったところまで自分が成長するとともに広がっていく大きな自我,日本では大我というが,そういうものが表われてくること。第2に自分を主観にとらわれず客観的にみることができるということ。ソクラテスというギリシャの哲人は非常に醜男だったがアリストファネスの書いた“雲”という芝居でソクラテスをもじって醜男の面をかぶった人物が舞台に出てきた。ところがソクラテスはそれを見て壇上に上がり,面を自分の顔とならべて「どうだよく似ているか」と呼びかけた。そういうユーモアとか心のゆとり,つまり現実の自分という狭いなかに閉じこもらずもう少し広い立場からながめることができるような態度をとること。第3に筋の通つた人生観を持つということ。そういうものとして宗教的な態度というものをあげている。
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