医療におけるQOL 現代患者論序説・5
人格形成ファクターと患者のQOL
ニノミヤ アキイエ・ヘンリー
1
Akiie Henry NINOMIYA
1
1神戸聖隷福祉事業団
pp.171-176
発行日 1988年2月1日
Published Date 1988/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209239
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
「人は人により人となる」と古くから言われているように,人間は他人との接触によって人格形成がなされる.人間はまず胎児より出発して幼児期,青年期,成人期,高齢期へと人生の旅を続けて死を迎える.他の動物と較べて人類の特徴は幼児期が長いことである.文化が進み,社会構造が複雑になると,幼児期は更に長くなる.その理由は,ひとりの人間を一人前の社会人として育てるために,技能的,知的,科学的な訓練を必要とするからである.文化,経済が豊かになると学齢期が長くなり,婚期も遅くなる.当然QOLにおけるLife (ライフ)の内容と質も変化する.成長期には脳,骨,筋肉,内臓等の身体機能的発達と同時に,人格も形成されていくからである.
精神分析学の研究は身体解剖学よりはるかに遅れて発達してきた.S.フロイドが「夢判断(The Interpre-tation of Dreams, 1900)」を発表してからまだ100年もたっていない.その間に医療は人間の心理面への配慮を行うことなく,身体解剖学を中心に発展してきた.
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.