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はじめに
リバーミード行動記憶検査(Rivermead Behavioral Memory Test;RBMT)1,2)は,1985年にWilsonにより開発された日常記憶検査である.2002年には日本版RBMT3)が刊行された.Wilsonは英国の心理学者で,さまざまな心理学を融合させ心理科学として脳損傷患者へのリハビリテーションの必要性を提唱し実践してきた.
筆者は,2001年,来日したWilsonに直接質問する機会を得た.その際,英国では記憶の代償機器(携帯機器)を使用しており,記憶障害者の生活をサポートするための機器の必要性をうかがった.どの段階でどのように代償機器・代償手段を使うことができるかを把握するためには,残存する記憶機能を適切に評価する必要がある.現在,欧米を中心に使用されている代表的な記憶検査はウェクスラー記憶検査(Wechsler Memory Scale-Revised;WMS-R)とRBMTである.
RBMTは,日常生活において記憶障害者が直面する問題はどこにあるか,その問題はどのような記憶障害から起こるのか,どの程度の記憶障害であるかなど,日常記憶の評価を可能にした検査である.
RBMTは9つの下位検査から成るが,3分の1は展望記憶課題である.展望記憶とは,「これから何をするかという予定を記憶する」ことであり,将来に向かっての記憶である.人との待ち合わせの日時,場所,目的を記憶することであり,生活に密接にかかわる.仕事や友人との大事な約束を忘れるなど,計画を立てても実行できない人は,約束をきちんと守れず,周囲の人たちからの信頼を失ってしまう.例を挙げると,「9時に電話をかける」という未来に実行することを意図した展望記憶は,記憶内容を保持し,適切なタイミングで自発的に想起することが求められる.この自発的に想起することが展望記憶の特徴のひとつである.展望記憶が低下すると社会生活に支障を来しやすい.
梅田4)は,展望記憶の3条件として,① 記憶の対象が未来に行うことを意図した「行為」であること,② 行為を意図してから,それを実行に移すまでの間にある程度の「遅延期間」があること,③ その遅延期間の間に,一度,その意図の存在を意識しない状態になり,再度それを「タイミングよく自発的に想起」する必要があること,と明記している.
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