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はじめに
1939年のウェクスラー・ベルビュー知能検査(WB)刊行以来,ウェクスラー成人知能検査(Wechsler Adult Intelligence Scale;WAIS)は1970年代までは知能の個人内差が測定できる検査として広く使用されてきた.その後,知能の基礎研究が進み,WAISの理論的,統計的裏づけのない検査批判が高まった1).キャッテル・ホーン(Cattel-Horn,1898)およびキャロル(Carroll,1993)の知能理論が,2005年,知能は3つの層(限定的能力,広範的能力,一般能力)から構成されるとするCHC(Cattel-Horn-Carroll)理論と統合され米国で高い評価を得るようになった2,3).
このCHC理論に基づきWAIS-Ⅲ4)が測定可能な能力は,流動性推理,結晶性知能,短期記憶,視覚処理,処理速度の5つとなった.流動性推理は「行列推理」,結晶性知能は「単語」,「知識」,短期記憶は「数唱」,「語音整列」,視覚処理は「積木模様」,「絵画完成」,処理速度は「符号」,「記号探し」の下位検査によって測定される.測定されない能力は,ほかの検査で補完する必要がある.
2008年,米国ではWAIS-Ⅳから言語性知能指数(Intelligence Quotient;IQ)と動作性IQが廃止され,一般能力指標と過程評価検査が始まっている.近い将来,日本版WAIS-Ⅳとなるため,理論の推移から現在の理論に基づいた解釈が必要となる.改訂された理由は,理論的基盤を更新すること,臨床的有用性を高めることにある.一般能力指標とは理解力,推理力を測る高次な機能の指標である.過程評価検査とは情報処理過程や課題解決過程を,入力→統合・貯蔵→出力という過程から,どこに問題があるかを臨床的および質的に評価する.WAIS-Ⅲ知能検査の概要を図にまとめる(図1).
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