Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ウィリアム・スタイロンの『見える暗闇—狂気についての回想』—芸術とうつ病
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.350
発行日 2016年4月10日
Published Date 2016/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200574
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『ソフィーの選択』などで知られる米国の作家スタイロンが1990年に発表した自伝的なエッセイ『見える暗闇—狂気についての回想』(大浦暁生訳,新潮社)は,スタイロン自身のうつ病体験を綴った作品であるが,そこには,「鬱病は偏りなく手を伸ばして来るが,かなりの信憑性で実証されているのは,芸術家的なタイプ(とくに詩人)がとりわけその病魔に弱いということだ」とする病跡学的な認識が示されている.スタイロンは,「この病気が深刻な臨床的表われ方をすれば,犠牲者の20パーセント以上が自殺の形をとる」,「このようにして倒れた芸術家たちの例を現代と近代からほんのいくつか拾うだけで,悲しくもあるがキラ星のような名簿となる」として,ゴッホやヴァージニア・ウルフ,パヴェーゼやヘミングウェイなど,20人の名前を挙げている.
スタイロンは,うつ病と芸術家の密接な関係を強調しているのである.
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