連載 ほん
狂気する大地の上に
塩原 経央
pp.60
発行日 1973年3月1日
Published Date 1973/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204495
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"この揺るぎない大地"という言葉には,人間の大地へのほとんど無限に近い畏敬の念と信頼の念がこめられている。大地は草木を育て,農作物を恵み,生きとし生けるもののいのちを保ってきた。しかし,人間は科学技術の開発に腐心することに一生懸命でも,ことさらに日常,大地の慈愛について想い起こすことをしてきただろうか。
洪水や地震や,たまさかに襲う地異に,ふと畏怖することはあっても,それはそのときかぎりで,あとは日常の些事のなかで忘却してしまうというのがおおかたのありようであろう。詮なし,これが人の日々の安堵を願う知恵かもしれない。
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