連載 初歩からのトラキライト:第1回
トラキライト®とは…暗闇に光る一条の光
青山 和義
1
,
竹中 伊知郎
1
1新日鐵八幡記念病院 麻酔科
pp.1014-1021
発行日 2008年10月1日
Published Date 2008/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100463
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【Medical science General Hospital(MGH)のERにて】
MGHのERには,緊迫した空気が漂っていた。
「だめだ。ファイバー持ってきて!」(誰かが叫ぶ)
外傷による心肺停止状態で運ばれてきた患者の心肺蘇生中だが,肥満患者で挿管困難の様子だ。
「ファイバースコープはさっき使ったので使用できません。」(誰かが答える)
来院後すでに15分程度経過しているが,喉頭鏡で挿管不能。エアウェイスコープでも喉頭蓋をうまく挙上できずに,挿管困難である。マスク換気もだんだん怪しくなってきている。そんな時,一人の麻酔科医が駆けつけてきて言った。
「部屋の電気消して」
部屋が一瞬真っ暗になる。
「何?」
(誰もがそう思った)その時,患者の頸部に一条の光が走った。
わずか数秒後,部屋が明るくなると,患者の口元の気管チューブからバッグ換気が行われている。なんと!気管挿管はすでに成功していたのだ。
しばらくすると,心電図モニターからも規則正しい同期音が聞こえ始めた。
「心拍,戻りました。」(蘇生に成功だ)
「先生,どうやって挿管したんですか?」(誰かが麻酔科医に尋ねた)
「トラキライトですよ。」
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