Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ポローニヤスの忠告―太宰治の「新ハムレット」より
高橋 正雄
1
1東京大学医学部健康科学・看護学科精神衛生学教室
pp.1279
発行日 1992年12月10日
Published Date 1992/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107257
- 有料閲覧
- 文献概要
太宰治の「新ハムレット」(昭和16年)は,シェイクスピアの「ハムレット」をパロディ化した作品で,そこには太宰一流の鋭い心理分析が含まれているが,特に面白いのが,ポローニヤスのレヤチーズに対する忠告の部分である.ポローニヤスは,パリ留学に旅立つ一人息子のレヤチーズに,学生生活の心得を縷縷語ってきかせる.その中には,「1学年上の学生を,必ずひとり,友人にして置かなければならぬ.試験の要領を聞くためだ」とか,「大望を抱く男は,一厘の借金もせぬものです.貸す事もならん.お前から借りた男は,必ず,お前の悪口を言うだろう.自分で借りて肩身が狭く,お前をけむったいものだから,必ずどこかで,お前の悪口をたたきます」など,今日にも通ずるような忠告も見られるのだが,太宰の真骨頂は,こうした細々とした忠告の後で,ポローニヤスに次のように言わせていることである.
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.