Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
太宰治の『走れメロス』―身体的な疲労による自暴自棄
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.296
発行日 2011年3月10日
Published Date 2011/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102016
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昭和15年に発表された太宰治の『走れメロス』(新潮社)には,身体的な疲労から自暴自棄に陥るという心理現象が描かれている.
メロスが三日目の夕暮れまでには戻るという王との約束を守るためにシラクサの街へ急いでいた時である.メロスは荒れ狂う激流を渡り,山賊たちの襲撃をかわして一路シラクサへと向かうのだが,度重なる災難にさすがのメロスも疲れ切って一歩も動けなくなる.するとメロスの心には,「もう,どうでもいいという,勇者に不似合いな不貞腐れた根性」が芽生えてきた.「私は,これほど努力したのだ.約束を破る心は,みじんも無かった.神も照覧,私は精一ぱいに努めて来たのだ.動けなくなるまで走って来たのだ.」
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