Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
『古事記』の速須佐之男命—躁うつ病的な精神変調
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.678
発行日 2015年7月10日
Published Date 2015/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200306
- 有料閲覧
- 文献概要
西暦712年に完成した『古事記』(蓮田善明訳,岩波現代文庫)の上巻には,速須佐之男命の躁うつ病的な気分変調を思わせる言動が描かれている.
母であるイザナミノ命が亡くなってからの速須佐之男命は,「足摩りして泣いていられて,そのお泣きになる有様は,まるで,青々した山も枯山に変ってしまうほど,咽喉をからして泣き,川や海の水もことごとく干しまうほど,焼け付くように泣きわめかれる」というような精神状態に陥る.速須佐之男命は悲しみのあまり,父であるイザナギノ命から託された国の統治ができなくなっただけでなく,「わたくしは,母上の国の,根堅洲国に行きたいので,泣いているのです」と,自らの死を願うほどの状態になっているのである.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.