Japanese
English
特集 遺伝子疾患解析の発展
躁うつ病
Manic-depressive illness
吉川 和明
1
,
野々村 禎昭
2
Kazuaki Yoshikawa
1
,
Yoshiaki Nonomura
2
1東京都精神医学総合研究所分子生物学研究室
2東京大学医学部薬理学教室
pp.27-32
発行日 1988年2月15日
Published Date 1988/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905093
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精神分裂病や躁うつ病(双極感情障害)などの主な精神疾患は,遺伝要因と環境要因の相互作用によって発症するものと推定されるが,その遺伝要因を担う遺伝子に関してはほとんど明らかになっていない。遺伝疾患へのアプローチには一般的にその疾患が多発している集団(家系)の調査が必須であるが,精神分裂病や躁うつ病は遺伝因子の関与は推定されているものの,分析対象となる適切な家系に乏しいことや家系内の各世代での疾患発症の客観的データが得難いことが解析をきわめて困難にしてきた。
躁うつ病は比較的遺伝する傾向が強いことは従来から指摘されてきたが,最近Nature誌に掲載された躁うつ病遺伝子が第11染色体またはX染色体上に存在するという報告は,分析に適した家系とマーカーを選択すれば精神病の遺伝子にもアプローチできることを示したもので,今後の精神疾患の生物学的研究の方向を考える上で示唆に富むものである。これらの研究は制限断片長多型性(Restriction Fragment Length Polymorphisms,RFLPs)や既知の遺伝形質をマーカーに用いて,連鎖分析によって躁うつ病遺伝子が特定の染色体上に存在することを証明したものである。したがって現段階では躁うつ病遺伝子そのものについての情報が得られた訳ではない。
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