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はじめに
脳性麻痺とは「受胎から新生児期(生後4週間未満)の間に生じた脳の非進行性病変に基づく,永続的なしかし変化し得る運動および姿勢の異常」1)と定義されている.多くは脳室周囲白室軟化症などの錐体路障害による痙直型麻痺を生じるが,なかには弛緩性麻痺を生じる症例やアテトーゼ型と呼ばれる不随意運動を生じる症例もある.多くの症例が筋緊張が亢進することによる痙直型麻痺なので,痙直型麻痺に対する手術療法に関して述べることとする.
脳性麻痺の分類は古くより麻痺の生じる部位により片麻痺,両麻痺,四肢麻痺などに分けて述べられることがある1)が,両麻痺と四肢麻痺の境界線が曖昧であるため手術療法の適応を決めるために有意義な分類であるとはいえない.Gross Motor Function Classification System(以下,GMFCS)2)は日常生活における最大移動能力を用いて5つのタイプに分類する方法で客観的にわかりやすく,手術療法の適応やタイミングを決める際にも大いに参考になると考えている.
脳性麻痺による痙直型麻痺では主に二関節筋(腸腰筋,ハムストリングス,腓腹筋など)の短縮による関節障害(拘縮,脱臼や亜脱臼)が生じ,それらが二次的に単関節筋の筋力低下を助長すると言われている.関節障害を予防する方法としてリハビリテーション,ブロック治療(ボトックス®,フェノール),装具治療があるが,一度生じた関節の拘縮,脱臼,亜脱臼を改善させるには手術治療が最も効果的である.しかし,拘縮や脱臼があればすべて手術をすればよい訳ではなく,それらを手術治療で改善させることが患者の移動能力,日常生活動作の向上,維持につながるかどうかをよく検討して手術適応を決める必要がある.
GMFCSは大きく5つのグループに分かれ,レベルⅠは歩行,走行ともに日常生活にまったく支障がないグループ,レベルⅡは自力歩行が可能だが,走行,階段歩行などで支障があるグループである.レベルⅢは歩行器や杖などの補助具を用いれば歩行が可能なグループ,レベルⅣは歩行は不可能だが,床上での自力移動(四つ這い,寝返りなど)が可能なグループ,レベルⅤは自力移動が不可能な最重症レベルである.どのレベルにおいても,4~6歳ごろの幼児期の手術は手術後のリハビリテーションの効果も含めて効果が得られやすいことが多い1,3,4).他の年齢の手術適応,タイミングについてはGMFCSのレベルに分けて考える必要がある.
これよりGMFCSのレベル別に,筆者が考えている手術適応と手術の適切なタイミング(年齢,時期)について述べる.関節拘縮の目安としては,関節可動域で股関節は開排45°以下,外転30°以下,屈曲拘縮10°以上,膝関節は膝窩角135°以下,足関節は背角0°以下(膝伸展位)としており,股関節亜脱臼はX線正面像においてMigration Percentage5)33%以上を亜脱臼,100%を脱臼とする(図1).
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