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はじめに
今日,脳性麻痺に生じる脊柱変形に対し治療として最も良好な成績が報告されているのは,インストルメンテーションを主体とする手術である.装具療法や理学療法,ボツリヌス注射,筋解離術などはインストルメンテーションの時期を先延ばしにすることは可能かもしれないが,これに取って代わることは難しい1,2).この手術は脊柱の変形を矯正し,呼吸器への影響を未然に防ぐとともに骨盤傾斜を改善させること,装具を用いずに良好な座位バランスを得ることを第一の目的とするが,二次的に消化器機能が改善するとともにADL(activities of daily living),QOL(quality of life)が向上したとの報告も多く3),家族や介助者の満足度の高い治療の1つである4,5).医学の進歩とともにその手技やインプラントは大幅に進歩しており,成績も向上している.
残念ながらこれらのことは,患者を幼少期から診ていて,患者にとって最も身近な存在である小児科医やリハビリテーションセラピスト,小児整形外科医,リハビリテーション医らには十分に周知されていない.筋解離術や股関節脱臼の手術などに比べ,側弯症に対する手術は患者,家族が受けることを躊躇する場面を多く経験する.確かに,手術を要するような高度変形例ではほとんどが重度麻痺で,呼吸機能障害や消化器機能障害,栄養不良に基づく低タンパク血症や貧血,抗痙攣薬による出血傾向,尿路感染,骨萎縮なども併存する.術後感染,インプラントにかかわるトラブル,偽関節など発生率の低くない合併症のリスクを承知したうえで手術を受けることは決してたやすくない.しかし,これら合併症は十分に治療体制を整えれば対処可能であること,そして,この手術の有益性をぜひ知っていただきたい.
本稿では,脳性麻痺の脊柱変形に対する,特にインストルメンテーションの手術に関し適応と評価,実際の手技,治療成績,合併症,後療法などについて述べる.
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