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私は東京慈恵会医科大学のリハビリテーション医学講座に入った当初,まったく研究に興味がなかった.早く一人前のリハビリテーション医になってバリバリ働きたいというのが希望であった.しかしリハビリテーションの世界はまだまだエビデンスが少なく,臨床現場で「本当にこれでよいのか?」という悩みや疑問が蓄積,次第に身の回りのデータで自分の疑問を解決することに面白さを感じるようになっていった.はじめ日本語の論文をいくつか書いた後,講座の安保教授のもと科研費で嚥下食物性の研究に取り組み,いくつか英語の論文を書かせていただいた.PhDはvoxel-based analysisを用いた嚥下障害者の脳血流解析でいただいた.
あるとき,外部の臨床研究セミナーに参加したとき,一部の専門職大学院(高度専門職業人の養成を目的とした大学院)で臨床研究手法を系統的に学べると聞いた.調べたところ日本に臨床研究を学べそうな専門職大学院としての公衆衛生大学院(School of Public Health;SPH)は京都大学,九州大学,東京大学,帝京大学に設置されていることを知った.臨床研究がどんどん面白くなっていた私は,PhDをいただいた直後,安保教授に東京大学のSPHで1,2年勉強させていただけないか相談した.当時,若い医局員も徐々に増えてきていたこともあってか,働きながらのSPH進学を許可していただいた.SPH入学には統計検定2級以上の能力が必要と聞いていたが何とか合格した.しかし,SPHの統計の講義はかなり難しく,同期の優秀な人たちに教えてもらいながら置いていかれないよう必死にしがみついていった感じであった.SPHにはいわゆる医療技術者以外にもメディカルライター,生物統計学者,医療倫理学者を目指している人たちがおり,よい刺激を受けた.特に学部上がりの生物統計学教室の学生たちは非常に優秀で,何度も臨床研究の相談に乗ってもらった.私は臨床疫学・経済学の教室に出入りするようになり,いくつか論文を書かせていただいた.
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