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はじめに
病気になっても,生活の支えが必要になっても,家族友人がいる住み慣れた地域で,慣れ親しんだ文化や行事や四季の移ろいを感じながら老いたいと思うのは多くの日本人に共通している.しかしながら,これを可能にするには,医療と介護の行政区分の相違や,多種類の機能分化した医療介護施設から利用者が選択するなかで,容易なことではない.寝たきりや認知症になると,遠い施設にお願いするといった慣行は,過去のものではない.生活圏でのケアは「地域包括ケア」と呼ばれるが,在宅生活を支援するためには,医療と介護の一体的サービスをアレンジできる「センチネル拠点」が必要である.そこで本稿では「老健」がその候補として可能か論ずる.
2014年の診療報酬改定ほど,介護老人保健施設(以下,老健)が注目を浴びた年はないといえる.まず,老健において開発された認知症の非薬物療法である認知症短期集中リハビリテーションが,診療報酬上も算定が認められることとなった.介護保険のなかで生まれたリハビリテーションが医療保険に採用された前例はなく,画期的なことといえよう.また,急性期病棟などの医療機関からの退院患者の受け皿として,在宅復帰・在宅療養支援型老健が指名を受けることとなった.さらに,「介護保険リハビリテーション移行支援料」が新設され,リハビリテーションにおける医療保険から介護保険へのスムーズな移行が評価された.今後は,維持期リハビリテーションの担い手として,老健のもつ通所リハビリテーション,訪問リハビリテーション,個別リハビリテーションといった機能に期待が集まるのは間違いない.
今回の診療報酬改定で明らかになったのは,徹底した「在宅指向」であろう.わが国の医療保険と介護保険の財政状態が逼迫していることは衆知の事実であり,超高齢化社会を迎えようとしているこの時期にこのような方向性が示されたことは意義深い.医療の分野では早期退院による入院費の削減,介護の分野では退院後の在宅生活を支える効率のよいサービス提供が求められることになる.そして,今注目されている 「地域包括ケアシステム」を整備するためには,医療と介護の垣根をなくしていくことも重要と思われる.
本稿では上記を踏まえ,老健とその環境変化および現状を述べたうえで,老健いこいの森(以下,当施設)の取り組みに続き,全国老人保健施設協会(以下,全老健)の取り組みについても紹介する.
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