Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
病跡学者としての湯川秀樹―『続々天才の世界』におけるウィーナー論
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.374
発行日 2002年4月10日
Published Date 2002/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109745
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わが国初のノーベル賞受賞者湯川秀樹は,文化的な問題にも関心の高かった物理学者で,創造性についてもさまざまな発言をしているが,1979年に発表した『続々天才の世界』(小学館)では,サイバネティックスの創始者ノーバート・ウィーナー(1894~1964)について,次のように語っている.
湯川はまず,ウィーナーが大人になってからも妻の指示に子供のように従い,妻に向かって「ぼくはいい子でしょう」と言ったというエピソードを紹介したうえで,ウィーナーが「自分の身のまわりのことは何もできない」人で,日頃妻からコントロールされるような人だったからこそ,サイバネティックスというコントロールの理論を考え出したのではないかと推測する.「実際にうまく自分をコントロールできている人は,そんな理論を考えたりしない」わけで,ウィーナーも,理解力や思考能力はすぐれていたものの,手先が不器用だったから,逆に,機械のデリケートな操作に関係するような一般理論をこしらえたのではないかと推論するのである.
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