巻頭言
研究倫理について
安倍 基幸
1
1星城大学リハビリテーション学部
pp.197
発行日 2014年3月10日
Published Date 2014/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552110423
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私は勤務する大学で研究倫理委員会の委員長をしている.論文を読むときでも研究倫理の記載や医学雑誌の投稿規定の倫理規定が気になることも多い.そこで研究と倫理に関することを最近の事例や今まで経験してきたことを踏まえ雑感を述べたいと思う.
最近は,ある降圧剤に関しての論文のデータ操作問題がマスコミを賑わせている.新聞・テレビで内容を知った方も多いに違いない.ある大学の調査委員会は科学的論文として不適切と結論づけたことからわかるように,論文撤回も相次いでおり,さらにこの事例は拡大しそうである.今回の事例が国内外にわが国の臨床研究に対する信頼性を大きく損ねたことは間違いないように思える.この事例の詳細は省くが,研究倫理からすればもう一つ大きな問題がある.マスコミでは報道があまりなされていないが,それは「利益相反管理」に関して不適切であったことだ.国の対応および再発防止策の検討委員会による中間とりまとめでは,大学,製薬会社とも利益相反状態を適切に把握し,管理する機能・組織がないと厳しく指摘されている.また倫理審査委員会の審査のあり方にも批判の矛先が向けられる可能性もあり,今後の推移を見守る必要がある.
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