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研究の倫理
人間を対象にした研究をすすめるに際しては倫理的な問題が関連してくる。最近翻訳された『医学的研究のデザイン(研究の質を高める疫学的アプローチ)』1)の中に記述されている研究に関する倫理の問題によると,医学的研究では人権尊重(respect for persons),最善(beneficence),公正(justice)の3つが倫理の一般的原則として挙げられている。すなわちその意味は,「人権尊重」とは,研究者は対象となる人々を自律した個人として対応し,必ず事前にインフォームド・コンセントを得ておく必要があること。また,「最善」とは研究者は対象となる人々にかかるリスクを最小限にとどめ,利益が最大限になるように努力すること。「公正」とは研究によって生ずる利益とリスクが対象となる人々の間に不公平が生じないように配慮することである。あわせて人を対象とした研究のためのガイドラインの要点として,米国保健福祉省(DHSS)による内容が紹介されている(表1)。
なお,インフォームドコンセントに関しては日本語訳にいくつか意見はあるが,1964年にヘルシンキで行われた第18回世界医師会総会で採択された『ヒトにおける生物医学的研究(臨床実験)に携わる医師のための勧告』いわゆる『ヘルシンキ宣言』がある。そこでは,まず人体実験(臨床実験)は医学の進歩のために必要なものであるとした上で,実験にあたっては被験者の人権を極力守らねばならないとし,実験の目的,方法,予想される利益,起こりうる危険や苦痛などについて被験者に十分な説明をして,被験者の自由な意志に基づく同意(freely given informed consent)を得ることが必要であり,またこの同意はできるだけ文書にしておくことが望ましいと紹介されている。
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