Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ヒルティの『眠られぬ夜のために』―不眠症の活用
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.870
発行日 2013年9月10日
Published Date 2013/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552110249
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1901年に発表されたヒルティの『眠られぬ夜のために』(草間平作・大和邦太郎訳,岩波書店)の序文は,「眠られぬ夜はたえがたい禍いである」という一文で始まる.この序文では,文字通り不眠に関するヒルティの見解が示されているのである.
ヒルティはこの序文の中で,「一時的な不眠にせよ,あるいは永続的なものにせよ,適当な有効な療法があればそれを用いるか,それとも,せめて不眠そのものをできるだけ利用するほかはない」と,不眠をいたずらに嘆くのではなく何らかの救いの手段を試みることが必要だとしているのだが,彼は不眠にもさまざまな原因があるとして,次のように述べる.「不眠はたいてい病気や,心配事や,不安な物思いから起る.だが,ときには,休息のとりすぎ,安逸な暮し方,いろいろな不節制,あるいは不適当な時間の昼寝などから起ることもある」.また,ヒルティは睡眠については未だにわかっていないことが多いとしながらも,健康を保つためには適度の眠りが必要で,特に神経系の病気には欠くことのできない治療手段であることや,人工的な睡眠剤はできるだけ避けねばならないことなどが経験的にわかっていると述べる.
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