連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・45
「眠られぬ夜」のために―『つみきのいえ』『よぞらをみあげて』
柳田 邦男
pp.378-379
発行日 2009年5月10日
Published Date 2009/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101469
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人は自分の心の中に鬱積するものを吐き出したり,生きてきた人生を語ったりすると,心が癒されたり穏やかになったりすることが多い。とりわけ,人生の来し方をじっくりと語りつくすと,自分を無意味な存在だと思っていた人でも,不思議と自己肯定感を持てるようになる。
なぜだろうか。
おそらくそれは,人間が物語を生きているからだと,私は考えている。専業主婦であれ八百屋であれビジネスマンであれキャリアウーマンであれ,一人の人間が10年,30年,50年と生き抜く人生の中には,山あり谷あり,喜びもあれば悲しみもある。それらを回想して,さまざまな出来事やエピソードをつないでいくと,確実に一編の長編小説に匹敵するほどの物語になる。
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