Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
湯川秀樹の『旅人』―自衛としての自閉
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.90
発行日 2005年1月10日
Published Date 2005/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100015
- 有料閲覧
- 文献概要
昭和33年に発表された湯川秀樹の自伝『旅人』(角川文庫)には,敏感で繊細な神経の持ち主であった湯川が自らの世界に閉じこもることで精神的な安定を保つ,いわば自衛手段としての自閉という生き方が描かれている.
元来,「波立ちやすい心情の持ち主」だった湯川は,小学校に馴れるのが遅く,友だちも多くは作らなかった.いざという時に「ものが言い出せない」という障害を自覚していた湯川は,面倒なことは「言わん」の一言で片づけていたため,「イワンちゃん」というあだ名をつけられていたのである.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.