Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
廃用性筋萎縮を詳細に評価することは廃用の程度を知るだけではなく,リハビリテーションによる筋力改善の余地,治療の有効性などを知ることができ,訓練プログラムを組み立てるうえでも重要である.
廃用性筋萎縮の臨床的な評価法としては,画像診断,筋力測定,ならびに組織化学的方法が一般的である.しかし,画像診断では,断面積に筋線維の萎縮だけでなく周辺組織の増減も反映される問題や,健常側が存在しない場合では比較ができず萎縮度の定量的な評価が難しくなる問題がある.また,筋力測定も,運動制限がある場合や,被検者の協力が十分に得られない場合は測定そのものが不安定であり,信頼性が乏しくなる.これに対して,組織化学的方法は健常側がない場合や,被検者の積極的な協力がなくても,筋線維そのものの断面積ならびに筋線維タイプを測定でき,筋線維断面積の縮小や筋タイプごとの萎縮度の差異として定量的な評価が可能である.しかし,筋生検は侵襲的かつ繁雑な手技であり,臨床上用いることは困難である.このため,廃用性筋萎縮の評価法として,非侵襲的かつ簡便に筋線維そのものの萎縮,筋タイプの変化を定量的に評価する方法が理想的な方法として望まれる.
一方,廃用性萎縮筋の電気生理学的変化に関しては,Wolfら1)は,ヒトの萎縮筋に針筋電図検査を施行した結果,活動電位の干渉波の減少と振幅の低下はあるものの,神経疾患のような病理学的変化は認められなかったと報告している.干渉波の減少は表面筋電解析にても認められ2),収縮時に動員している運動単位数の減少とされるが,無動化に伴う一過性なものと報告され,筋の萎縮を直接反映するものでないと考えられている3).また,振幅の変化は萎縮に伴うものと考えられるが定量的に捉えることは難しく,いわゆる臨床筋電図において廃用性筋萎縮を詳細に評価することは難しい.これに対して,筋線維伝導速度(muscle fiber conduction velocity;MFCV)は神経筋接合部に生じた活動電位が筋線維両末端方向に伝播する速さで,筋線維膜の電気的興奮性を反映するものであり,その臨床応用は筋の生理学的変化を非侵襲的に評価し得るものとして考えられている.その測定の試みは20世紀初頭よりなされているが,Buchthalら4-6)により1950年代から系統的に研究が行われるようになり,基礎的検討がなされ,近年では簡便に測定する方法が開発され,臨床応用も報告されている.
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.