Japanese
English
増大特集 リハビリテーション医学2007―最近10年の動向とエビデンス
リハビリテーション・アプローチ
廃用症候群
Disuse syndrome.
松嶋 康之
1
,
奈良 聡一郎
1
,
蜂須賀 研二
1
Yasuyuki Matsushima
1
,
Soichiro Nara
1
,
Kenji Hachisuka
1
1産業医科大学リハビリテーション医学講座
1Department of Rehabilitation, University of Occupational and Environmental Health
キーワード:
廃用性筋萎縮
,
後肢懸垂ラット
,
中間径フィラメント
,
酸化的ストレス
,
アポトーシス
Keyword:
廃用性筋萎縮
,
後肢懸垂ラット
,
中間径フィラメント
,
酸化的ストレス
,
アポトーシス
pp.1145-1151
発行日 2007年10月10日
Published Date 2007/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101079
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はじめに
廃用症候群とは,生体の活動性や運動量の低下(hypokinesia),あるいは不動の状態(akinesia)が続くことで生じる二次的障害であり1),筋骨格系にとどまらず,循環器,呼吸器系から,内分泌,腎機能,あるいは自律神経系や精神症状にまで及ぶ多種多様な症候の総称である.古くからリハビリテーション医学のみならず,さまざまな領域で基礎・臨床研究がなされているが,近年の診療報酬にもリハビリテーション実施要件に関する疾患として明記され,リハビリテーション以外の医療従事者もその用語に遭遇することが多くなってきた.
廃用症候群における筋組織は,いわゆる廃用性筋萎縮の病態を呈するが,類似した病態は癌の悪液質,感染症による敗血症,神経障害,熱傷,AIDS,慢性腎不全,心不全など多くの疾患や,加齢,宇宙での微小重力状態などでも起こりうる.このように筋萎縮は多種多彩な原因,疾患,病態によって生じてくるので,とくに臨床の場においては,筋萎縮や筋力低下などの理学的所見に加え,その背景となる全身状態を把握することが必要である.また,近年の研究によると,筋萎縮の病態は筋のタンパク質分解がタンパク質合成を上回る単純な合成・分解のバランス崩壊ではないようである.これらの機構はそれぞれ独立して機能しているわけではなく,複数の異なるシグナル経路が関与し,それぞれ相互補完的に協調した結果である2).
このように廃用症候群に対する研究は非常に多岐にわたるが,今回は廃用性筋萎縮の形態学と生化学・分子生物学の側面から概要を述べる.
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