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はじめに
障害児に対する教育が新しい方向へと動きつつある.一方,医学と医療の進歩は,障害の治療や軽減と障害児の心身の健康の増進などに寄与することにより,障害児の生活の向上をもたらしてきた.ここでの障害とは,学校教育の観点からみた特別の教育的支援を必要とする障害カテゴリーを指しており,肢体不自由障害,聴覚・視覚障害,知的障害,自閉症などの障害が該当することになる.ここでは,精神と行動の医学・医療を中心に据え,治療教育と療育とをキーワードにして,医療と教育の結び目について,児童思春期精神医学の立場から考えてみたい.
これらの障害は人生の早い時期に生じ,通常は一生涯にわたって続く.そして,その障害を持つ子どもと両親にとってさまざまな生活の面での困難として現れる.早期からの適切な医療,教育,福祉,さらには労働についての総合的な関わりは,これらの障害を持つ子どものよりよい人生を送ることに寄与することになる25).
障害児が意義ある生活を送るための支援として,医療と教育との密接な関わりがあることは誰でも直感的に理解できることである.また,医療に望むものと,教育に望むものとに差があることも同様である.障害児の持った障害は通常は一生涯にわたって続く故に,身体的精神的な健康と発達とが総合的に配慮されねばならない.学童期にあっては,医療と教育とは,これらの障害を持つ子どもの生活の向上と心身発達の促進のために必要なものである.歴史的にもその連携についての議論が数多くなされてきた.しかし,子どもの持つ主な障害が,身体障害であるか,知的障害を含む心と行動の障害であるか,により若干の差異があるものの,医療は医療,教育は教育と相互に独自な領域を主張しあい,両者の連携は依然として未解決の問題となっている.
本論文では治療教育と療育を通して,障害児の医療と教育の関わり方の歴史と現状と将来のあり方について検討する.なお,ここで医療と言うときには,どちらかと言えば技術的な側面を指し,医学と言うときにはその基礎的側面を指すことにする.
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