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はじめに
教育と医療の接点について体験を基にして問題点を提示するようにとの編集子からの連絡を受け,経験の浅い若輩なので大きな戸惑いを感じたが,今までの経験を振り返りながら気付いた点をメモしてみようと思いたった次第であるが教育と医療というのは問題が大きすぎるので,それぞれ管轄の異なる学校と施設の接点というところで把えてみるつもりである.
肢体不自由児施設は,肢体不自由児に対して整形外科的治療を行ないつつ将来独立自活できるように生活指導,教育など児童福祉的措置を行なう施設であるとされ,現在日本全国に77施設が設置されている.
この肢体不自由児の療育事業というのは,医療と教育が車の両輪の関係にあると従来からいわれている.その目的とするところは肢体不自由児の人間的な向上と社会自立であり,医療を主とする施設と教育を主とする学校との両者の共同の責任において育てあげられるものであるが,入園している肢体不自由児の必要の緩急度によって医療および教育の優先措置が決められるべきであり,子どものその時の状況により,その度合が変化するものであることは多くの人に認識されている.
施設の医師,看護婦,PT,OT,ST,児童指導員,保母や,学校の教師は共にそれぞれの専門家であり,専門家には独自の人生観,児童観や考え方があり,その上,一定の時間内に集中して医療と教育が行なわれるので,結局一人の子どもに多くの職員が寄ってたかって医療,訓練,育成,教育を行なう複雑に交錯した場であり,自己主張の強い,換言すれば自己の専門に固執しすぎればトラブルが必ずおきるものである.しかし子どもたちが社会自立できるよう育てることが第一の目的であり,お互に必ず理解し合えるものと信じているが,従来までにいろいろな点での考え方の相違,行きちがいなどがあるのでそれらについてふれてみたい.
施設の現状や背景を考慮にいれながら施設と学校の関係を知る必要があると思うので紹介する.私どもの施設は本州の最北端である人口約24万の青森市にあり,市の中心街から約4粁の地点にあり比較的便利のよい所で経営主体は県立県営である.昭和36年1月に竣工し,昭和36年3月から入園療育を開始した.規模は敷地22,035平米,建物は3,065平米平家建て,通園部は562平米平家建てで,入園部定員100名,通園部定員40名,施設としては中規模で,職員83名で運営されている.看護体制は特類看護を採っている.
学校は昭和36年4月に施設入園中の学齢児童,生徒に対して学校教育を施すために施設内の学習棟を利用し,小学部3学級,中学部2学級の複式の学級編成で発足した.その後一部増築を行ない年々学級数をふやし,8年後に隣接地に約1,260平米の校舎を新築し現在では小学部10学級,中学部5学級,高等部1学級の16学級編成となっている.このうち小学部,中学部の各1学級は重複障害学級と称する特殊学級で,小学部3学級,中学部1学級は病床学級(ベッドサイドスクール)である.学校職員は校長以下26名の教師,他に事務,用務員,運転手が6名の32名で構成されている.児童・生徒数は通学は高等部生徒8名を含む12名,入園児約90名で児童・生徒総数は凡そ100名程度である.2,3の問題について述べる.
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