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はじめに
昨年秋,トロントで開かれたアメリカ脳性麻痺・発達医学会(AACPDM)では,Evidence based physical therapyと銘打ったコースが開催された.そのなかで,脳性麻痺(CP)児の治療の根拠を提供する機能評価の方法として紹介されていたものを表にまとめて見た(表).理学療法をメインテーマとしたコースなので,上肢の評価や教育・心理学的な評価方法は含まれていない.注目して欲しいのは,現在でも治療効果の証明のために使われている記述的な方法が含まれていないことである.機能評価尺度に関しても,かなり精選されて定番と言えるものが定まってきた感がある.
同じコースのなかで紹介された治療の方法としては,筋へのボツリヌス菌毒素の注入を中心としたキャスティング,整形外科的手術療法,選択的後根切断術,バクロフェンの髄腔内投与などの痙性を抑える治療が,その適応が十分に整理され,システマチックに適用されるようになっていた.このような治療環境のなかでのセラピストの仕事は,痙性が沈静化された基盤のうえに立って活動能力を組み立てていく方向へと向かっている.痙性は確かにCPの運動障害のもっとも重要な側面ではあるが,われわれは機能訓練という手段でそれと闘いすぎてきたのではないだろうか.しかし,北米でこのような治療環境が整備されつつある背景には,標準化された機能評価尺度が使え,治療手技の科学的根拠(evidence)が提供できるようになったことが大きく影響している.
このコースの記録については,手元にある資料と覚え書き以外は公式のものは刊行されていない.これは学会前日の特別企画の一つとして催されたためである.しかし,その内容は上記したように示唆に富むものであり,日本でCP児の治療に携わるわれわれが進むべき道を示してくれているように思われる.CP児の機能評価に関しては,このコースで扱われたものを中心に解説し考察を加えたい.
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