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はじめに
リハビリテーションにおける評価に関する研究が進み,身体の人間工学的分析,ADLの概念整理,言語評価,発達や年齢・心身相関の機序,動機付けなど行動科学としての専門化の発展がみられる一方,障害価値観や社会的・経済的条件なども含めた綜合的評価に対する要請も少なくない.
リハビリテーションの過程は同じ目的で参加する医学,教育,職業,社会福祉など各分野の人々のチームワークに依存しているので,異なる専門領域の人の間に共通に利用できる用語や指標が一つでも多く欲しいことはいうまでもない.同一個人の身体機能であっても,評価の目的が生物学的,解剖学的なdimensionにある場合,個人の生活機能的なdimensionにある場合,また社会的価値や利益のdimensionからの場合とでは,意味や性質がかなり違ってくる.たとえばBunnell2)の例示にあるように,左示指の屈筋腱の断裂は,ロシア音楽のバイオリニストとニューギニア原住民族とでは,生物学的,解剖学的には同じ評価こなり得ても,社会的価値や利益の上からは全く異なる評価になるのである.
しかしdimensionの異なる場合でも,身体の基礎的な評価手段であるROM testやmuscle testは,共通な情報手段として自由自在に活用できて重宝である.また基礎的評価具のひとつとして,知能テストにおけるIQが,その永年にわたる効用と限界についての批判を受けながら,一目的に限定されることがなく,なお一般に広く活用され,各界の共通語たり得ていることは,IQの溝成慨念の良さと,使用のし易さ,普遍性,そして社会的要請などの理由によるものと考えられて興味深い.
リハビリテーションで用いている各種のテストを体系的に位置づけて点検してみたところ,手指機能について,運動器(reactor)としての基礎的な作業遂行テストであり,適切なテスト構成と表示法を備えたものが少ないことに気付き,必要だと考えられた.これらのことから示唆を得て1966年以来Finger Function Quotient(FQ)という慨念を設定し,そのテスト器具のセット(test-battery)の開発のために,医師,OT,PT,心理の各スタッフがアイデアを持ち寄って研究を重ね,幾つかの試作をつづけた.1968年この研究に対し,厚生省新医療技術研究費の援助がなされ,1969年さらに継続研究援助により,器具の完成,漂準化,そして因子分析を進め,医学的リハビリテーションから職業的リハビリテーションまで,利用の仕方によっては多面的に活用できると思われるシステムの完成をみた.
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