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はじめに
脳卒中患者で嚥下障害が起こりやすいことについて多くの報告がある1,2).脳卒中患者において嚥下障害は,食事という日常生活での楽しみを奪うだけでなく,水分,栄養摂取の障害とともに,誤嚥性肺炎を起こす危険があるという点で,機能予後や生命予後にも大きく影響する.脳卒中のリハビリテーションにおいて,肺炎を起こさないように患者を管理していくことは重要なテーマである.
脳卒中を起こしたというだけで肺炎が起こりやすいとの報告もある3).しかし,誤嚥が肺炎の原因であり,誤嚥の検索にはVideofluorography(以下,VF)が最もよいという報告が多い4,5).小口ら6)の述べるように,嚥下運動の協調性をみるにはVFがよいと考えられる.Groher7)は,VFは患者が誤嚥しているか,いつ誤嚥するかを見るもので,嚥下性肺炎を直接予測するものではないと述べている.さらにGroherは,どういう患者が誤嚥するか,どういう患者が嚥下性肺炎になるかという,2つの異なった,しかし潜在的に関連している事柄の関係を明らかにするようVFを利用していくべきであると述べている.
矢内8)は,肺炎予防のための2大機能として嚥下機構と咳機構の2つがあると述べている.また,嚥下障害と全身機能や痴呆の関連についても多くの報告がある9,10).このように,嚥下性肺炎に関連する因子の数は多く,そのなかでVFが占める役割についても議論が多い.どの評価が重要なのか,また各評価の相互関係について考察した文献は乏しい.
今回,われわれは慢性期脳卒中患者で,臨床所見として嚥下障害(医師,看護婦,家族より嚥下障害があると報告されたもの)がある患者を対象とし,誤嚥性肺炎発生を予測する因子を,1)嚥下機構の障害,2)咳機構の障害,3)身体,精神の活動性の障害,の3つに分けて検討した.
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