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はじめに
グループ治療は,戦後,欧米において戦傷者に対する有効性が示された.最近では医療分野のみではなく,健康増進や個人の成長といった機会を提供するユニークな治療法として,断酒会等さまざまな分野で発達してきている1).日本でのグループ治療は,作業療法の1分野として社会適応の改善を目標において主として精神科領域で発達してきた.最近,田原ら2)は,身体障害者,痴呆老人などに対して,意欲の向上,社会適応の改善を目的とするグループ治療の報告をしている.われわれは,当院に入院した脳血管障害の患者で機能訓練への意欲が十分でない者や,また痴呆症状を呈し病棟でも不穏等の問題を抱えている者に対し,社会性の向上を目的にグループ治療を実施している.主な内容は,回想法,レクリエーション,園芸,感覚刺激である.われわれのグループ治療の目的は社会適応能力の改善であり,グループ治療の評価として社会適応評価スケール(以下,NOSIE)を使用している.
社会適応能力の低下した患者は,消極的であったり,グループ運営の妨害をしたりとさまざまな問題行動を引き起こすことがある.こういった問題行動を引き起こさないように意欲を向上させていく必要がある.作業行動理論の考え3)では,作業療法において意欲を向上させるために対象者の興味を知り,適切な作業へと誘導することが重要であるとされている.対象者は作業を通して小さな成功体験を積み重ね自信をつけていくことが重要である.われわれはグループ治療において患者の興味について検討することで,成功を経験し,意欲が向上することで社会性が向上するのではないかと考えた.
グループ治療の内容については,対象者との面接時での情報収集や生活背景,興味についての質問等から決定していた.しかし,例えば編み物に興味があるからといって手工芸全体に興味があるわけではなく,以前に興味があったことの聴取のみでグループ治療の内容を決定しても,患者の意欲を向上させることは困難である患者が存在する.技能的な低下に直面させることで,かえって好ましくない結果に終わる場合もある.グループ治療を有効に実施するには,単に過去の経験を聞くだけではなく,患者の興味の全体構造を知る必要があると考えられた.
興味について,Matsutsuyu4)によって開発されたNPI興味チェックリストや,NPI興味チェックリストをKielhofnerら5,6)が改訂した68種類のチェックリストが広く利用されている.最近,山田らは高齢者版興味チェックリストの作成についての研究を報告している7).
当院でグループ治療を実施する患者に対して,上記の2つのチェックリストを施行したところ,患者からは,質問内容が曖昧である,質問の項目数が多すぎるといった指摘があり,また,痴呆患者等では集中力が持続せず信頼性のない結果に終わってしまった.そこで,NPI興味チェックリスト,改訂版チェックリストに基づき,新たな興味チェックリストを試作した.このチェックリストに基づいてグループ治療の内容を決定できるようにするため,質問項目のグループ分けをした.妥当性,信頼性のある興味チェックリストを作成することができ,老人の興味の全体構造を捉えられたことで,グループ治療の効果の改善を認めたので報告する.
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