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はじめに
脳卒中をはじめとする仮性球麻痺や筋神経疾患,腫瘍に伴う嚥下障害は嚥下性肺炎の危険を伴い,その死亡率は50%以上に達するとの報告がある1).従来,その予防と栄養確保のために嚥下障害を伴う人たちに対して中心静脈高カロリー輸液法,経鼻経管栄養法,経皮胃瘻法,経皮経腸法などが試みられ,安全性・簡便性・感染予防・外観性・快適性などにより経皮胃瘻法や経腸法が勧められている2).また胃食道逆流症による嚥下性肺炎を減少させるという点において経腸法が勧められ3),胃食道逆流が少ないものには胃瘻法を勧める報告がみられる4,5).しかしわれわれの経験した13例の経腸栄養者では下痢・電解質異常・血糖異常などが多くみられ,投与時間も長時間を要するなど,管理上難点が多く,頻回な嘔吐と嚥下性肺炎を繰り返す症例以外は胃瘻法が適切であると考えられた6).しかし従来からの胃管を経皮的に挿入した胃瘻法は問題も多く,自己抜去,自己抜去時のミス留置,腹壁固定の困難性とカテーテル移動に伴う瘻孔の拡大,胃液漏出による皮膚炎,着衣時のベルト固定による違和感,入浴時の保護の煩雑さ,老人福祉施設入所の困難さ等があげられる.そのため在宅にて嚥下障害を伴う患者に対しては胃瘻造設を必要とする手術や内視鏡的造設術を行わず,経鼻胃管を挿入し多少の危険はあるものの在宅にて栄養管理を受けるものが多く認められる.しかし最近Bard Interventional Productsにより製作されたボタン型胃瘻チューブ(以下,ガストロボタン)は従来の胃瘻法によるさまざまな問題点に改善がみられ7),欧米での報告は1984年以来散見され8,9),本邦でも佐藤らが小児科領域での有用性を報告している10).しかし高齢者に対するガストロボタンの有用性についての報告は少なく,長期嚥下障害患者の在宅医療を安全に行い,患者自身が満足のいく日常生活を営むことのできた症例を経験し,広く応用されることが望ましいものと考え,その有用性を症例をもって紹介する.
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