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はじめに
脊髄損傷による対麻痺では,リハビリテーション訓練の一環として長下肢装具を用いた歩行訓練が行われる.訓練当初,機能回復に向けて意欲を示す患者も,装具歩行における不安定性,駆動力を伴わないための歩行能力の低さ,莫大なエネルギー消費による易疲労性などの理由により,退院後は車椅子の利便性もあって全く装具歩行をしなくなる例がほとんどであるのが現状である.しかし,長期間,立位・歩行を行わないことによる拘縮,骨萎縮,デコンデショニングなどの医学的問題のほかに,対麻痺患者にとって健常人と同じ目線に立つことができる起立・歩行に対するあこがれは依然根強く,多くの患者が新技術の登場を心待ちにしている,一方,リハビリテーション医療者のなかには,現時点で必ずしも満足のいく結果が得られないことがあることから,これら新技術が患者の障害に対する受容を遅らせるとして否定的見解を述べるものも少なくない.医学の各分野では,遺伝子工学,万能細胞の臨床応用への研究,ロボット技術応用の手術など最先端医療のみならず,さなざまな新技術が医療内容,それにより得られる効果を一変させている.この点において,リハビリテーション分野は遅れをとっている印象はぬぐえない.そのためにも,リハビリテーション新技術の開発は将来にわたり必須である.このようななかで,機能的電気刺激(functional electrical stimulation;FES)は,コンピュータ,センサー,医用材料,ロボット工学を元とする制御技術の急激な発展により注目されおり,リハビリテーション分野では唯一,国が定める高度先進医療に指定されている.
FESを応用した脊髄損傷対麻痺の歩行再建は,医学者と工学者の共同開発により,旧ユーゴスラビアを嚆矢として世界各国で行われてきた.しかし,FES歩行再建には,多チャンネル制御が必須であり,難解であること,転倒などの重大な合併症の可能性がつきまとうこと,筋容量が大きく,個々の筋で十分な筋力を得ることが必ずしも容易でないことなど,種々の問題があることも事実である1).本稿では,新リハビリテーション技術としてのFESを紹介し,将来性について述べる.
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